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健康がテーマの飲食店様のメニュー開発
麹は和食に欠かせない日本の伝統的な調味料を作っています。醤油や味噌、本みりん、米酢には麹が不可欠で酒造りにも麹が使われています。普段何気なく口にしているものの原材料を調べたり、歴史を調べたりしてみると、日本の歴史と伝統と風土で受け継がれてきた麹の素晴らしい文化を私たちが楽しみながら未来へ繋げていくことも大切にしていきたいと思います。
目次
麹と発酵の勉強会
麹の始まりは神様にお供えしていたご飯がカビてそれを醸して宴会をしたという出来事が「播磨風土記」に書かれています。昔はなんでも蒸していたようです。お米を蒸した時の水分が原因で空気中に飛んでいた麹カビがたまたま米について麹になったというのが麹の始まりと言われています。現在、麹カビを培養している種麹屋さんは全国で10社ほどありますが、実際活動されている会社は6社ほどしかありません。このわずかな会社で日本中の醸造用の種菌を作っているのが今の日本の現状です。これらの会社がなくなってしまうと味噌も醤油も私たちの生活から消えてしまう可能性がありますね。日本の歴史と伝統と優しさで受け継がれてきた麹の文化を私たちが楽しみながら未来へ繋げていけるようしたいです。たくさんの方に麹の魅力について知ってもらうこと、麹を使った調味料を使って料理したものを頂くと私たちの体にもたらす良い影響、そしてそれらを実感して頂くには日々の生活で正しく取り入れることが大切です。それをお伝えすることが今の私にできることです。今回、飲食店様から発酵を取り入れたメニュー開発をされたいとご依頼いただき、麹と発酵について勉強会をさせていただきました。
麹から得られる良いこと
麹の大きな特徴は酵素を分泌することです。大体の生き物は酵素を体内に止めますが、麹は酵素を出し惜しみなく分泌します。私たちは食べたものをそのまま吸収できないので吸収できるサイズにしてくれるのが酵素になります。ハサミのような役割です。麹の菌が発酵していく過程でタンパク質をアミノ酸に分解するプロテアーゼを作り、また、でんぷんをブドウ糖に分解するアミラーゼを作ります。酵素が働くことによって旨味や甘みを引き出して素材を柔らかくしたりします。発酵食品をとる目的ということの一つに酵素の力で食べ物の成分を分解したり新たな栄養素が生まれますので、その栄養素と酵素の働きで消化吸収しやすくなったものを頂くことが発酵食品をとる目的とも言えます。
腸内細菌と麹の関係
私たちの体には「常在菌」という多数の菌が存在しています。腸内フローラは大腸に形成されている微生物の集団で100から1000兆個の腸内細菌が存在しています。重さにすると1〜2キロあり、人間の体は37兆個の細胞で出来ているのでその10倍以上の微生物と共に生きていることになります。腸内細菌は解毒、代謝、合成、排出などを多くの酵素を使って体を維持する酵素反応をするといわれているため私たちの体には欠かせない臓器とも言えます。酵素は人間が生きていく上で大切なもので、消化吸収はもちろん、見る、聞く、話す、といった機能も酵素が大きく関わっています。人間の細胞で作られる「消化酵素」(食べ物を分解して体に吸収しやすいようにする酵素)「代謝酵素」(体内に吸収された栄養素を体の細胞に届ける酵素)はDNAに基づいいているためコントロールできません。唯一体内で酵素を作る方法は腸と共生している腸内細菌が作る酵素「腸内酵素」の力を上げることはできます。その腸内細菌の役割は大きく分けて5つあります。
①人の消化酵素では分解できない食材(食物繊維や大豆イソフラボン、海藻など)を分解して新たな栄養素を作り出す。
②人が作り出すことができないビタミンB群やビタミンKを作る。
③免疫細胞を刺激し、免疫力を高めたり、調整したりする。
④セロトニンの合成にかかわるなど脳に良い影響を与える。
⑤有害菌への感染を防ぐ成分を作り出す。
人間が分解することができない食物繊維に含まれるセルロースを分解して栄養を取り出すことをする細菌。日本人の90%の人は「海藻」を分解する酵素を持つ腸内細菌が存在していますが欧米人は5%の人しか持っておらず日本人ならではの特徴と言えるのと同時に、身土不二と言ってその土地の季節のものを頂くことが大切なのがよくわかります。免疫機能の70%が腸に集まっているので、花粉症やアレルギー症状などは腸内細菌の減少が関係していると言えます。腸の中の善玉菌はビタミンを作り出します。ビタミン不足は疲れや体調不良、肌荒れにつながります。
幸福物質の幸せホルモンは脳ではなく腸で作られます。セロトニンが含まれる食品はありません。セロトニンの原料はタンパク質です。食事から摂取したタンパク質はそのままでは吸収できません。タンパク質はアミノ酸がつながっている状態になっているのでそれをバラバラにするのが酵素の役割です。食事で摂取したタンパク質がセロトニンになり脳の中に送り込まれる仕組みは、まずトリプトファンという(アミノ酸の一種)ものが腸内細菌の働きにより前駆体に変化します。そしてセロトニンになり神経伝達物質を使って脳に送り込まれます。ここで腸の中に腸内細菌が入ってないとセロトニンが脳の中に増えないということになります。
麹で作る発酵調味料
腸内細菌がいる腸をきれいにするには生きたまま腸まで到達して腸内フローラのバランスの改善をすることで体に良い作用をもたらす微生物またはそれを含む食品を摂ることが有効的です。味噌や、醤油、ぬか漬け、甘酒、塩麹、醤油麹、納豆などです。ぬか漬けはとっても優秀で、きゅうりをぬか漬けにすると乳酸菌が1g10億、ビタミンB1も10倍になります。また、善玉菌の餌になり腸内の善玉菌の増殖を促す食物繊維の摂取、野菜、きのこ、海藻、芋、豆類など。大豆、ごぼう、玉ねぎ、ニンニク、アスパラ、蜂蜜、甘酒などは腸内細菌の大好物なオリゴ糖が含まれています。よく、発酵食品とってます!ヨーグルトを毎日食べてます!とおっしゃる方がみえますが、発酵食品、食物繊維、オリゴ糖、この3つをバランスよく取ることで腸内の善玉菌が優位になる環境にすることができるのでヨーグルトだけというのは正しい発酵食品の取り入れ方とは言えません。そして、発酵食品も味噌などは非加熱で菌が生きているものを選ぶことも大切です。麹に関しても乾燥麹は保存期間を長くするため熱風で乾燥させるので酵素も菌もいない状態です。死菌体と言って生菌体と同等もしくは死菌体でのみ免疫活性化などの効果を発揮するものもありますが、生麹は菌も酵素も生きているのでより腸に届きやすいです。和え物やドレッシングには生麹で作った発酵調味料を使うと良いです。
今回飲食店様には生麹を使って18種類の発酵調味料をご試食していただきました。白米、玄米、麦にそれぞれ黄麹菌と黒麹菌をつけて6種類の麹を作りさらにそれをそれぞれ、塩麹、醤油麹、甘酒にしたもの18種類です。黒麹はまだまだ珍しく一般には(黒白米の乾燥麹のみ流通しています)黒麹で作った麹は自分で作ることしかできません。黒麹は酵素が黄麹菌の4倍、クエン酸も含みますので酸っぱい麹ですがクエン酸は疲労回復、美容にも効果的ですし、何よりその酸味がとても美味しです。梅のような酸味だったり、黒玄米の醤油は柑橘類を足すだけでポン酢のようになります。黒麦醤油は甘味がありますし、黒麦塩は魚介やマリネとの相性がとても良いです。このように18種類全て違う味なのでその麹の味の特徴を利用していろいろな料理にアレンジが可能です。健康をテーマに発酵を取り入れたメニューを開発されたい飲食店様も黒麹の魅力をたくさん感じていただきとても喜んでいただきました。外食ではなかなか健康という点でお店を選ぶことは難しい中、今回の飲食店様のように地元の食材やこだわりの調味料、そして腸を整えることができる発酵調味料を取り入れたメニューがあることは女性はもちろん、腸を整えることでストレスに強い脳が作られるのでストレス社会で働く男性にも喜ばれるお店づくりができると思いました。
まとめ
心も体もポイントは腸。腸内環境をよくすることが元気の近道。麹で作られている発酵食品。醤油、味噌、塩麹、醤油麹、醤、お酒、本みりん、鰹節。昔ながらの麹菌を使用して作られた「発酵調味料」が腸を整えます。イライラしたり、誰かと比べて落ち込んだりそう思う気持ちが常にあるのは、本当に自分に何もないわけでなく食べ物のせいです。腸内を整えることは精神的にも安定し幸せと直結します。単に生きるために食べるのではなく食べるという行為によって幸せと感じたり、喜びを感じることができるので何を選んでどう食べるかは大切なことです。